子どもへの忌避

仕事で読売テレビに行ったら、「名探偵コナン」のプロモーション看板がど~んとディスプレイされていた。

コナンと言えば、ウチの息子たちが小さいころからやっていたアニメ番組。

調べてみたら1996年から放映され早17年。そんなに長くやってたのか…。

でも、ドラえもんやちびまる子ちゃん、アンパンマンはもっと長いなぁ、とあらためて子ども向けアニメのロングランぶりに思いを馳せたりした。

日本は深刻な少子化、本格的な人口減少時代に突入した、と騒がれている。

とはいえ、年間の出生数は約100万人。

2011年の場合、約103万3千人の赤ちゃんが誕生している。結構な数、生まれてるんじゃないの? と素人目には思えてしまう。

よく話題になる合計特殊出生率は、1.39(2011年度)。これは、15歳から49歳の女性の年齢別出生率を合計した指標で、ひとりの女性が平均して一生の間に何人の子どもを産むか、という推計だ。

だからといって、「世の中、ひとりっ子が多いんだねぇ」と単純に考えるのはちょっと違う。

結婚した夫婦の間で何人の子どもが生まれているか、という「完結出生児数」なるデータがあるのだ。

ここ最近のデータを見ると、2002年が2.23人、2005年が2.09人、直近の2010年が1.96人となっている。

つまり、結婚した夫婦からは、平均して2人の子どもが生まれている、ということだ。

なぁんだ、やっぱり結構な数、生まれてるじゃん、とつい楽観的になるが、完結出生児数はあくまでも「夫婦の間で何人の子どもが生まれているか」を指すデータ。

調査は、結婚期間が15年から19年までの初婚同士の夫婦を対象に行われるので、未婚の人はもちろん、これから子どもどうしようかな、と迷っている新婚カップルなどは反映されていない。

今は未婚の人が増えている。2010年の未婚率は、30歳~34歳の男性が47.3%と2人に1人。30歳~34歳の女性が34.5%と3人に1人に上っている。

昭和の時代なら、結婚して子どもがいても不思議じゃなかった年代の人が、結婚しないし子どももいない(もちろん、未婚で子どもがいるというケースはあっていい)。

というわけで、子どもを増やすには若者を結婚させなくちゃならない、そのためには若者の経済的な成長や雇用の安定が大事、保育所の充実や子育て支援に力を入れなくちゃ、育児休業は3年間に延長…などと少子化対策がいろいろ検討されている。

だが、本当にこの先、日本は経済成長するんだろうか。

若者にじゃんじゃん仕事があって、給料は右肩上がりで、安心して結婚し、何人も子どもを育てられるという未来があるのだろうか。

そもそも、「子どもが増えない」という現実が、経済問題とか、保育所が足りないとか、同じようなフレーズで語られつづけることに、私は違和感があるのだ。

もっと別の面から考えなくていいのか、と。

それは、「子どもへの忌避」とでも言えばいいだろうか。
 
たとえば待機児童問題だ。保育所が足りない、だから女性が安心して出産できない、それが少子化の一因、とまことしやかに言われている。

確かに保育所の拡充は必要だろうから、そのためには「予算」、つまりおカネがいるってことになる。

仮に、少ない予算をやりくりしておカネを確保したとしよう。さぁこれで保育所ができる、と思ったら「甘い」のだ。

今、特に都市部では、あらたに保育所を設けることは単におカネの問題では済まない。周辺住民の「反対運動」が起きたりするからだ。

近所に保育所ができると、子どもの遊ぶ声がウルサイ、送迎の車の路上駐車、運動会の音楽とか、焼き芋大会の煙とか、園庭の土ぼこりとか、いろんなことが迷惑だから、「保育所は作るな! 」という人が少なくない。

実際、既存の保育所には、近隣からの苦情がやむことがない。子どもは騒がしく、汚く、目ざわり…、そうした負のプレッシャーに悩む保育士はたくさんいる。

確かに、子どもはウルサイし、邪魔だし、非効率な存在だろう。

でも、みんなかつては「子ども」だったはず。

自分自身が小さくて、弱くて、たくさん迷惑をかけて育ってきたのに、そういう自分を棚に上げて、今の子どもに対するおおらかさ、許容をなくすというのはどんなもんだろう?

子育て中のお母さんを取材すると、「子どもがいるから、迷惑がられて肩身が狭い」とか、「子連れで歩いていたら、邪魔だ、と怒鳴られツバを吐かれた」といった話が出る。

子どもを持って、世の中から冷たい目で見られちゃうとしたら、そりゃ子どもがほしいと思えなくなっても仕方ない。

子どもや、子どもを育てている人たちが大切に見守られなかったら、いったい誰がじゃんじゃん子どもを生もうと思えるだろうか。

少子化は、おカネの問題だけではないと私は思う。

今の日本は、本当に「子どもたちが愛される社会」なのか、そっちを考えるべきじゃないだろうか。