家で死ぬということ ひとり暮らしの親を看取るまで 文藝春秋(2023/8/28)

第55回 大宅壮一ノンフィクション賞候補作

家で死ぬということ ひとり暮らしの親を看取るまで
家で死ぬということ ひとり暮らしの親を看取るまで

「はじめに」より

父は入院も施設入所も拒み、住み慣れた家でひとり暮らしをつづけた。
私は終末期の父に付き添い、介護し、死にゆく傍らでその一部始終を見ていた。
周囲にそんな話をすると、「理想的な最期ですね」、「お父さんにとっても、ご家族にとっても、これほど幸せなことはない」などと言われる。
一面では正しいが、別の面では必ずしもそうではない。理想の背後には思いがけない現実の壁があり、幸せの裏側で数多くの葛藤がある。
家で死ぬ父と看取る私、それぞれの思いが食い違い、きれいごとでは済まない局面に立たされることもしばしばだった。

(中略)あくまでも個人的な体験ながら、父と私に降りかかったさまざまな出来事をありのままに綴りたい。
父と同じように住み慣れた家で最期を迎えたい人、家族を在宅で看取りたいと思う人たちに「家で死ぬ」というリアルを伝え、真に納得した最期が訪れるよう、本書が一助となることを願っている。

目次

第1章 看取りのはじまり
ピンピンコロリと言う人ほど、「コロリ」のほうを考えない
もう入院は懲り懲りだ
ヘルパーなんか来なくていい
自殺するみたいであり得ない 
など

第2章 介護保険が打ち切られた
噛み合わない会話
ヘルパーによる通院介助は自費?
施設抑制、在宅介護推進
キーパーソンの心は揺れる
など

第3章 コロナ禍の葛藤
八八歳、末期腎不全が「心身ともに自立」とされる
介護保険はいったい誰を助けるのか
子どもが知らない親の人生
たかがパンツ、されどパンツ
など

第4章 父と娘の終末期
「病院へ行く」ということ
余命を伝えるむずかしさ
在宅死は増えているのか
各駅停車の三〇〇km
など

第5章 臨終まで
老いの、本当の孤独を知る
異性の親の「インセン」
死の目安
家族の思いはそれぞれ
迫りくる死
など

第6章 看取り後の気づき
エンゼルケア
遺体搬送の裏事情
「お金」から見る在宅看取り
どう老いて、どんなふうに死ぬか
など

石川結貴 著書一覧