出版社での打ち合わせ
本や雑誌の記事を書いているので、出版社について詳しいと思われるのでしょう。
「出版社ってどんな感じですか?」という質問をときどき受けます。
うーん、どんな感じと言われても…、と正直答えに困るのです。
出版社と一口に言っても、規模やカラーは全然違います。
たとえば一番大きな出版社である講談社は歴史ある旧館ビルと高層の新館ビルがあって、めまぐるしくいろんな人が出入りしています。
入口には屈強そうなガードマン、受付ではきれいなお姉さんたちがてきぱきと面会処理。たまにしか行かない私などつい気圧され、妙にオロオロしています。
新館ビル内のカフェテリアで編集者と打ち合わせをしていると、近くの席に高名な作家の方が座っていたり…。
「あっ、あの人は?!」とドキドキして、ほとんど「おのぼりさん状態」です(笑)。
一方、雑居ビルの一室や、自宅兼用で民家を使っている小規模の出版社も少なくありません。
机や書棚、コピー機、在庫のダンボール箱が所狭しと置かれた一角に、洗濯機や炊飯器といった生活用品があったりして。
それはそれで微笑ましい感じです。
ともあれ、出版社ってこんな感じ、と一括りにできないくらい、いろんな場面に出くわしてきました。
その一方で、実は私、あまり出版社に行く機会がないのです。
そう言うと驚かれるのですが、一度も行ったことのない出版社から本を出したこともあります。
本や記事を書くときに、もちろん編集者と打ち合わせはするのですが、どこかのお店で食事をしながらとか、お茶を飲みながらとか、わざわざ出版社の中で会うことは少ないのです。
最近は、電話やメールでの打ち合わせも増えて、なおさら出版社に出向く機会が減りました。
この傾向は、ちょっと寂しい。
フリーで、いつもひとりで原稿と格闘している身としては、時折、出版社の独特の空気を吸いたくなるのです。
さて、今回出向いたのは、東京・京橋にある中央公論新社。
「中央公論」や「婦人公論」などの雑誌だけでなく、たくさんの書籍を刊行してきた歴史ある出版社です。
受付前には、新刊のラインナップがずらり。
映画化された本のポスターが貼られていたり、賞の受賞作の前にお祝いの花輪が飾ってあったりします。
こういう光景を見ると「ああ出版社だなぁ」と思わず身が引き締まり、担当編集者と打ち合わせをするにもやはり気合いが入るんです。
新しい作品を生みだすために、ここからがスタートだなぁと深呼吸して、私はまた次作の執筆に取り掛かります。