「うどん県」に行ってきました

秋と言えば食欲の秋や読書の秋などいろんな言い方がありますが、文化的な催しも集中する時期。

私も講演会のご依頼をたくさんいただいて、全国各地を飛び回る日々がつづいています。

そんな中、はじめて伺ったのが香川県。そう、さぬきうどんの本場で、最近では「うどん県」とも呼ばれています。

行きの飛行機で、「ああ、せっかく本場に行くんだからさぬきうどん食べたいなぁ」と思っていました。

でも、講演会はたいてい、行って、講演して、帰ってという強行スケジュール。

本場に行っても、さぬきうどんは食べられそうにないかも、とちょっと沈んでいたんです。

ところが…。大きな看板を用意して待っていてくださった香川県丸亀市の主催者様。

私の顔を見るなり、「よかったらお昼、さぬきうどんを食べに行きませんか?」とおっしゃってくださるではありませんか?!

わぁーーーい!

連れて行っていただいたのは、地元の方が行くひなびた食堂。これまたうれしい!

地元の人が普段使いで利用するお店は、おいしいに決まってます。

本場でのさぬきうどん初体験は、もう感動モノでした。

私は釜玉うどんとおでん(厚揚げと牛すじこんにゃく)をいただきましたが、今まで東京近辺のチェーン店で食べてたさぬきうどんとは全然違う。

あっという間に完食し、内心、「大盛りにすればよかった…」と思うほど魅了されました。

地元の方は、毎日のようにこんなにおいしいものを食べられて、うらやましいなぁ…。

最近、東京一極集中と地方の衰退がよく言われています。

確かに東京はなんでもそろい、おしゃれできらびやかな街。私も仕事柄、有名店で高価なフルコースなどをごちそうになった経験が何度かあります。

でも、根が貧乏性なのでとにかく落ち着かず、食べた気がしないというのが正直なところ(苦笑)。

つくづく、庶民の自分を感じるものです。

香川県への往復の道中では、『安井かずみがいた時代』(集英社)という本を読みました。

スタイリッシュで洗練された超セレブたちがこれでもかと登場し、六本木のはずれにある有名イタリア料理店『キャンティ』での人脈などが描かれています。

ずっと前、まだこの仕事をはじめたばかりのころ、「キャンティで自然に食事ができるくらいになった人こそ一流だよ」と教えられたことがあったけど、この本を読むと、エスタブリッシュメントの世界が垣間見えます。

華やかさの陰にある葛藤。

傲慢とも思えるほどの大胆さと、一方にある繊細さ。

贅沢すぎる外面と、どこかアンバランスな私生活。

私のような庶民には想像もつかない世界に生きる人がいる、それを教えてくれるのが本の力です。

おいしいうどんと一冊の本で味わった、食欲と読書の秋。

うどんもいいけど、やっぱり本はいいなぁと心の底から思います。

私もどなたかの心に何かを与えられるような、そんな本を書いていきたいと、今日も取材ノートや資料に埋もれています。