サプライズ! な贈り物
「お届け物でーす」と、ゆうパックが届いた。
包みを開けてビックリ! ハート型の茶色い物体に、こんな言葉が。
【石川結貴先生 ありがとうございました お身体大切に!】
一瞬、ドアプレート? と思ったが、よくよく見ると、なんとおせんべい。
カラフルな私宛てのメッセージも、同じくカラフルな花模様も、もちろん食べられるってことだ。
驚きのおせんべいを贈ってくださったのは、横浜富士見丘学園中等教育学校のPTA会長さん。
昨年の7月、私はこの学校でPTAの皆さん向けに講演をした。
中学生や高校生の女の子特有の問題、たとえば友達との関係やネット問題、親からのプレッシャーや将来に対する不安など、「イマドキ女子」についての講演をしたのだが、とても熱心に聴講いただいた。
講演後、PTAの皆さんと懇談したが、私も子どもを持つ身、同じ母親として相通じるものがある。
それに、こんな私でも、息子たちが小中学校のころはPTA役員をしていたから、役員の大変さやむずかしさも多少はわかる。
懇談の席で出てくる話に、うんうん、と納得しつつ、皆さんがとても優しい雰囲気を出していて心がホッとするひとときだった。
あたたかく迎えられ、そして見送られただけでもうれしかったのに、今またこうしてサプライズ! な贈り物と手紙が届いた。
ありがたいのはもちろんだけど、こんなにかわいいおせんべいを食べるのはもったいない。
ああ、どうしよう…と、うれしい悩みに包まれる(もちろん感謝の気持ちでおいしくいただきますが)。
同じ日の夕方、またもピンポーン、と訪問者。
ドアフォンのカメラに映るのは、あらら、近所のママ友ではないか。
「石川さーん、久しぶりー」と玄関に入ってきた彼女は、お庭で採れたというゆずをたくさん持ってきてくれた。
「ジャムを作ってもいいし、パウンドケーキにしてもおいしいよ」と、料理上手のママ友は言う。
「だよね。でも私、そんなにマメじゃないんだよぉ」と返す私。
「知ってる、知ってる。だから、ほら、こっちはおすそ分け」
苦笑しながら彼女が取り出したのは、ゆず皮のはちみつ漬け。
「これをお湯で溶いて、ホットドリンクにして飲めば? 持ってきたゆずは、お風呂にでも入れなよ」
わー、ありがとう! と、これまた優しい「お母さん」のまごころにふれた。
子育てがむずかしい時代で、お母さんたちはいろんな悩みを抱えている。
成長のこと、しつけ、勉強、友達関係、ネット問題、進路、教育資金は?
・・・そんな悩みがようやく一段落しても、今度は就職できるのか、仕事がつづけられるのか、結婚は? と心配は尽きない。
おまけに、女性の人生には、たくさん背負うものがある。
たとえ仕事を持っていても、家事、子育て、近所づきあい、身内のトラブル、介護、次から次へと「山」が現れる。
私など「山」が多すぎて、正直いろんなところにガタが来ているが、だからこそ同じ女性、お母さんたちからいただく優しさが沁みる。
間もなく立春。厳しい寒さの中でも、春の足音は着実に近づいている。
サプライズ! な贈り物をくださったPTA会長さんにお礼の手紙をしたため、ゆずを持ってきてくれたママ友には、もうすぐ花が咲く庭の水仙を届けよう。