うれしい再会

うれしい再会

今月、山口県山口市にある学校法人野田学園で講演をした。

対象は中学生と高校生、合わせて約1000人の生徒さん。

テーマは「自分で考える、ネット・スマホとの付き合い方」だ。

実は野田学園では5月にも講演をしている。

そのときは保護者と教職員の方々を前にお話ししたのだが、「すごくよかったので、今度はぜひ生徒の前でお願いします」とあらためてご依頼をいただいた。

実際に講演に参加してくださった方から、リピートでご依頼いただくのは特にうれしい。

さらに今回は、もうひとつうれしいことが重なった。

図書室に勤務されているO先生(ご本人の希望によりイニシャル表記)との再会だ。

最初の講演の際、担当の先生から「うちの学校に、石川さんの大ファンがいる」と紹介されたのがO先生。

早速、図書室で対面すると、O先生はおもむろにノートを取り出してきた。

なんだろう? そう思ってノートを見てビックリ!

拙著『スマホ廃人』の要点や感想、本文中に登場する専門家の名前などが細々と書かれている。

「ええっ?! こんなにしっかり読んでくださったんですか?」と驚く私。

O先生は笑顔で、「はい。すごくいい本だったので、生徒にも勧めているんですよ」と返してくださった。

読者の方とお目にかかれるのは、物書き冥利に尽きる喜び。

それに加えて自作の読書ノートまで作り、生徒さんたちにも勧めてくださるなんて、感激Maxだ。

O先生とゆっくりお話ししたいのは山々だったが、そのときは講演時間も迫っていて、軽くご挨拶程度で失礼してしまった。

その一件が心残りだったのだが、それからわずか数日後、再度の講演依頼を頂戴した。

こうしてO先生と再会できることになったのだ。

再びの野田学園訪問、今回は講演前に少し時間の余裕をいただいて図書室を訪ねた。

そこでまたもビックリ!

O先生は、私のインタビュー記事が掲載された朝日新聞の切り抜きなどを展示している。

「石川先生の記事を見つけたので、今度、この先生が講演に来るんだよって生徒に伝えていました」

私からは新聞記事のことなど特にお知らせしていないのに、ちゃんとチェック済み。

その情報を生徒さんにも告知して、講演への関心を高めてくださっている。

これはもう、単に私のファンという話ではない。

図書室という名の「知の宝庫」、あるいは「情報の発信源」を預かるO先生の仕事ぶりに頭が下がるばかりだ。

その仕事ぶりは、図書室の蔵書にも表れていた。

入口近くに「新書コーナー」という一角があり、ズラリと新書が並んでいる。

新書は書籍の中でも、専門的な分野とされる。

政治や経済、医療、教育、歴史、国際情勢、社会問題、学術解説などの専門的テーマをもとに書かれるものが多く、一般的には「おとな向け」だ。

それを中学生や高校生が利用する図書室に並べていることに驚いたが、このラインナップもすごかった。

私自身が「読みたい」と思っていた本がいくつもあり、既読した本、ベストセラーになった本、通好みの本、とにかくいろいろな種類が揃えられている。

「学校の図書室で新書コーナーなんて珍しいですね」

感心する私に、O先生は言う。

「医学部とか、専門的な学部に進学する生徒も多いので、少しでも役に立てるようにと揃えているんですよ」

さすが私立の一貫校とも言えるが、決してそれだけではないだろう。

O先生の本に対する知識や目利き、なにより生徒に対する深い愛情がなければ、なかなかできないことだと思う。

「あっ、この本、私も読みました。おもしろかったですよね」、「あー、これ読みたいと思いながらまだ読んでないんです」などと、私も一人の読者に帰ってO先生と新書談議。

「ずっとこの図書室にいたい。読みたい本がいっぱいあります」と言うと、O先生は「それはうれしいです」と満面の笑顔を返してくださった。

若者の読書離れとか、本の衰退とか、昨今の出版業界は暗い話題ばかり。

それでも、O先生のように本を愛してくださる人は確かにいる。

そしてそのまわりには、本との出会いで何かを学んだり、気づいたりする生徒さんたちもいるはずだ。

書く仕事は、基本的には孤独な作業だ。

けれども孤独の先には、多くの人との出会いやつながりがあるのだと感じて、心からうれしい。

O先生、そして野田学園の関係者の皆様、本当にありがとうございました。