中国デビュー

待ちに待った本がようやく届いた。

拙著『スマホ廃人』(文春新書・文藝春秋)の中国語翻訳版だ。

『スマホ廃人』は2017年に刊行したので、5年も経っている。

今さら? と首を傾げる人もいるだろうが、いくつか事情があったのだ。

もともと中国語翻訳版は、版元の文藝春秋と北京の出版社が契約を結んでいた。

ところが、しばらく経っても北京の出版社での動きがない。

文藝春秋の担版権当者の連絡にも応答がなく、そうこうしているうちに契約項目の「〇〇以内に出版する」という期間を過ぎてしまった。

詳しい事情は不明だが、お国柄のせいか、こういうことはままあるらしい。

その後、上海の出版社との交渉が進み、無事に契約を締結した。

そこへ降って涌いたのがコロナ禍だ。

世界中のどの国よりも厳しいコロナ規制を敷いた中国では、各地で都市封鎖、いわゆるロックダウンが施行された。

とりわけ上海は厳しく、長期化したロックダウンで経済活動がままならない。

もう無理かな、とあきらめかけていた今年の春、「2022年中に翻訳出版される」と連絡があった。

そうして実際、10月に現地で出版され、私のもとには先日、翻訳本が届いたというわけだ。

ちなみに中国での価格は38人民元、日本円にして約747円だ。

日本での出版価格とほとんど変わらない。

この価格設定に驚き半分、納得半分というところだろうか。

あくまでも書籍という範囲だが、この価格で本を買う消費者がふつうにいることに少しの驚き。

一方で中国の経済発展、特に上海という大都市の状況を考えれば、まぁこれくらいの価格でも売れるのだろうと納得する。

上海の出版社との契約を結んだあと、刊行の折にはぜひ現地を訪ねてみたいと思っていた。

だが、現状では日本からの観光目的の入国は禁止措置が取られている。

今後、規制緩和が進んだとしても、渡航直前のPCR検査やワクチン接種証明、現地各所での検査などを考えると、そう簡単にはいかないだろう。

数年後を楽しみに、今はこうして無事に形になったことに感謝して、中国語の本のページをめくってみる。

当然ながら、まったく読めない文字。

おまけに「簡体字」という略字のような文字で書かれているため、一般的な漢字の記述とは違う。

それでも「石川結貴」という著者名だけは元のまま。

人口13億人の中国、その片隅で私の本はどんな読者に届いてくれるだろうか。