友人とのひととき
ゴールデンウィークに入る直前、過密なスケジュールをギリギリ調整してハワイに行ってきた。
ひとり旅だったが、観光目的というより友人に会うため。
彼女は、国際NGOである「YWCA(Young Women’s Christian Association)」のオアフ支部CEO(最高経営責任者)、並木則子さんという。
元々の出会いは6年ほど前、並木さんが私のライティング講座を受講してくれたことがきっかけだ。
当時、ハワイに移住したばかり、アメリカ人のご主人と会社の経営をはじめていた。
そんな状況でライティングを学ぼうとしたのは、彼女ならではのチャレンジ精神の現れだろう。
ハワイへの移住前は、ABCやCNNでディレクターとして働いていた。
住まいも、東京、ワシントンDC、ニューヨークなどと変わり、ハワイで会社を設立してからは、アジアだ、北米だと出張三昧。
その後、YWCAにヘッドハンティングされたため会社は一時休業状態だが、CEOになった今もやはり全米各地に出張が多い。
私のような小心者で貧乏性の人間からすると、「世の中には、すごい女性がいるもんだなぁ」と感心するばかりだが、当の彼女はいつも自分を謙遜する。
それも、いかにも対外的な遠慮や自己卑下というのではなく、本当に「能ある鷹は爪を隠す」の典型タイプだ。
そんな彼女が、CEOという立場で実際にどんな手腕を発揮しているのか、一度この目で見たいと思っていた。
とはいえ、先にも書いたように小心者で貧乏性の私は、「ひとりでハワイに行く」なんて決断はそうそうできない。
仕事の調整どうしよう、おカネがかかるしなぁ、英語もできないし…、なんて思っているうちに数年が経ってしまい、しびれを切らした彼女から「もういい加減、来てください!」と重いお尻を叩かれた(笑)。
ハワイのYWCAは、就職支援や職業訓練など女性の自立のサポートをはじめ、コミュニティー構築やアクティビティプログラムといった多彩な活動をしている。
本部のビルにはレストランやプールがあり、そのほかにも広いキャンプ場や社会復帰支援施設など、いくつもの建物を所有している。
当然、スタッフの人員も多いし、必要な経費も多額。事業の利益だけでは捻出できないので、政府の補助や民間からの寄付集めで、「交渉」と「プレゼンテーション」の毎日だという。
施設を一通り見てまわったが、特に印象に残ったのが「Dress for Success」だ。
DV被害から逃げてきた女性や、刑務所から出所した女性など、これから社会復帰しようとする人たちに、洋服や靴、バッグなどの一式をプレゼントする。
すべて寄付として集まったものだが、きれいにディスプレイされていて、まるでおしゃれなブティックのよう。
サポートを受ける女性は、自分で好きな服やバッグを選べる。
もちろん、希望の職種に応じた職業訓練も無料。面接やマナー、コミュニケーションの指導もついていて、まさに全面的なバックアップ体制ができている。
ちなみに、社会復帰する人専用の宿泊施設も完備されている。
「さすが、アメリカは進んでるねぇ」と感心したら、「ここまでやっているYWCAはそうはない」と苦笑い。
実際、彼女がCEOに就任する前は、事業の進行は決して順調ではなかった。
赤字が累積し、スタッフのモチベーションも今ひとつ、新規事業など計画できるような状態ではなかったという。
それを短期間に改善し、おカネも、人も、事業計画もポジティブな方向へと転じさせたのだから、まったくすごいことだ。
…と感心ばかりしていたら、彼女がいろんな弱音を吐いてくれた。
人を使うむずかしさ、組織を動かす大変さ、トップに立つ者ならではの苦悩…。
それらをひとしきり聞き、わずかながらも彼女の内面にふれ、「ああ、思いきって来てよかった」と心から思った。
どこまでも青いハワイの空の下で、気づけば私たちは互いの仕事の話で盛り上がる(汗)。
ついヒートアップした心と体をクールダウンしようと、オバマ大統領行きつけのかき氷屋さんに行き、ほっと一息。
そのあとは、バーゲン中のショッピングセンターでしっかり買い物もして、女同士の楽しみも味わった。
帰国後にお礼のメールを出すと、「来年もお待ちしてます~」と返信が。
馬の鼻にニンジンのごとく、またハワイで再会できることを願って、さぁ私も仕事をがんばらなくっちゃ!!