「ゆずりは」を訪ねて
東京都小金井市にあるアフターケア相談所「ゆずりは」を訪ね、所長の高橋亜美さんとお話ししてきました。
http://asunaro-yuzuriha.jp/index.html
アフターケアって何のこと? そう疑問を持たれる方も多いでしょう。
「ゆずりは」は、児童養護施設や自立援助ホームなどを退所した子どもたちの「その後」を支援する民間の相談機関。
社会福祉法人子供の家が運営母体となり、常勤スタッフ2名が、困難な状況にある子どもたちのさまざまな相談に乗っています。
語弊のある表現かもしれませんが、いわゆる「ふつうの家庭」で育った人は、あたりまえのようにご飯を食べ、学校へ行き、親からお小遣いをもらいます。
高校や大学に進学もできるし、その間の生活は親が保障してくれ、たっぷり時間をかけて「おとな」になります。
なかにはおとなになっても、まだ親のスネをかじり、あれこれとモノを買ってもらったり、生活全般の面倒を見てもらう人だっています。
でも、世の中はそんな人ばかりではありません。たとえば親が虐待をするような人だった場合はどうでしょう?
子どもを傷つけたり、生活の面倒を見なかったり、登校させなかったりする家庭は、残念ながら少なくないのです。
そうした家庭の子どもは児童養護施設に入所したり、あるいは施設に入所しないまま破たんした家庭の中で成長します。
ただし、仮に児童養護施設で生活できても、いずれはそこを退所しなくてはなりません。現在は原則18歳まで施設で暮らすことができますが、高校へ進学しなかったり、中退してしまったり、「問題」を起こすと16歳とか17歳で施設を退所させられ、自立を迫られるケースもあるのです。
現代の日本で、親の庇護もなく、中卒や高校中退の学歴でいきなり「自立」するのは大変なことです。
基本的な生活習慣が身についていなかったり、基礎的な学力がなかったりすればなおさらでしょう。
仕事を探す、アパートを借りる、家具や生活用品をそろえる、そんな「当座のお金」もないまま「世間」に放り出されてしまったら…。
子どもたちがいかに困難な状況に陥るか、少しは想像していただけるのではないでしょうか。
…と、前置きが長くなりましたが、「ゆずりは」ではそうした子どもたちの就学や就労支援をしたり、生活全般の相談に乗っています。
こうやって文字で書くと簡単に見えますが、「ゆずりは」を頼ってくる子どもたちの現実は過酷です。
今日泊まるところがない。所持金がゼロ。自殺しようと思っている。借金ができた。おかしな契約書にサインさせられた。暴力を受けている。等々。
そんな相談を寄せてくるのが、まだ10代の子どもだという事実を、「おとな」である私たちはもう少し知るべきではないでしょうか。
一見平和で豊かなこの国の裏側に何が起きているのか。
「ゆずりは」所長の高橋亜美さんは、淡々と理性的に語ってくれました。
静かなその言葉の向こうにある根深い問題を見つめつつ、私は彼女の言葉をノートに書き留めました。