「私」を失くす母親たち 本の時遊社(2000/3)

1999年11月、東京都文京区で起きた主婦による「女児殺害事件」は、当初「お受験殺人」と間違った報道がなされた。この報道に異議を唱えて、「母親の現場」を丹念に取材する著者の姿勢に驚かされる。

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書評

子どもの名前の下に「ママ」をつけて「○○ちゃんママ」と呼び合う母親たち。仲間はずれにされることを恐れ、洗濯物を取り入れる時間まで合わせる妻たち。母と子だけの世界から抜け出せず、少しずつ「自分」を失っていく様子を丹念に取材した

読売新聞2000年3月19日号より抜粋

目次

第1章 速報―母親、同じ幼稚園、心と心のぶつかりあい。今、深夜のリビングに、速報ははっきりとした音と現実を、運びはじめていた。
第2章 疑問―事件がお受験とイコールで語られていくことに、強い違和感を持ち、しかもそれはふくらんでいく。
第3章 現場―「ぶつかりあい」というものは、特別、今度の事件の現場だけに起こっているものではない。
第4章 公園―何を、どう考えても、美奈子には自分が母親たちの輪に入れない「理由」はわからなかった。
第5章 集団―いったいなぜ、母親たちは集団を作り、そこに固執し、しかもそこから離れられないのだろう。
第6章 迷走―いつの間にか自分を見失い、やがて見失っていることにさえ気づかずに、さらに迷い、がむしゃらに走る母親たちがいる。
第7章 母親―私たちは互いのぶつかりあいを「心」の奥に秘め、「子どものために、仲良しでいなければならない」と思い込んでいたのだ。

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