ネットショッピングで詐欺に遭いかけた

ほとんどの人が日常的に利用しているネットショッピング。
私もちょっとした生活用品からこだわりの逸品、おせち料理などにも利用している。
仕事柄、ネットリテラシーは高いほうだと思っているが、そんな私でもまんまとだまされそうになった件について書いてみたい。
7月、我が家は法事を予定していた。
お寺の本堂で法要を行い、塔婆を持って墓参り。
その後は会食(昼食)という流れだが、なにしろ猛暑の最中だ。
参列者はわずか6人とはいえ食事処に移動するのも面倒だし、そもそも法事の会食ができるお店も限られている。
これまでは自宅近くのお寿司屋さんを利用していたが、当のお店が昼の営業を取りやめていたため、今回は仕出し料理を利用して自宅で席を設けようと思った。
早速、ポータルサイトで「仕出し 千葉市」と検索。ちなみに千葉市は私が住んでいる場所だ。
このときはヤフーを利用したのだが、検索画面のトップに表示されたのが「仕出し割烹 しげよし」なるお店だった。
早速、お店の公式ホームページを確認すると全国各地に支店があり、彩り豊かな懐石の仕出しメニューがズラリ。
「お誕生日」、「記念日」、「お節句」、「法事」などとカテゴリー別に、おいしそうな仕出しが写真付きで紹介されていた。
クチコミなども一通りチェックしてまた検索画面に戻り、別のお店のサイトも閲覧したが、「配達区域外」だったり、メニューの種類が少なかったり…。
何店舗かを比較検討したあと「やっぱり、しげよしだな」と思い、ホームページ経由で注文することにした。
「おもてなし箱御膳」5,860円を6個注文して、計35,160円
配達先の住所や氏名、電話番号にメールアドレス、それに配達希望日時を入力して楽天カードで決済した。
無事に「注文を承りました」というメールと領収書が届いて一安心。
ところが2日後、しげよしから思いがけないメールが来た。
「お客様のお宅に仕出しを配達する店舗が現金決済しか受け付けていないため、商品配達時に現金で支払っていただけるでしょうか」といった内容だ。
えっ? カードで支払い済みなんですけど?
楽天カードからは「カード利用の速報版」メールが届いているから、間違いなく決裁されているのに、なんでまた現金で支払う?
それじゃ、二重払いになるんじゃないの?
当然、そういう疑問がわく。
しげよしからは「カード決済分については、銀行振込または現金書留で後日返金する」というメールが来たが、返金期日も示されず、どう考えても怪しい匂いがぷんぶんする。
あらためてヤフーで「仕出し割烹 しげよし」と入力したら、あらら…。
変換予測に「トラブル」、「返金されない」、「悪質」などと出てくるではないか。
とにかく返金について慎重に確認をしなければと、ホームページに記載されていた会社の電話番号に電話してみた。
ところが、これがまたとんだユーザー泣かせ。
「AIコール」なるもので、「お客様のお名前をどうぞ」、「お客様の住所をどうぞ」などと自動音声が流れるだけだ。
「〇〇〇です」と住所を吹き込んでも正しい音声認識をせず、「住所は〇△□ですか? よろしければ1を。違っている場合には2を押してください」みたいな、とんちんかんな対応。
まじめに何度住所を伝えても、全然先へと進まない。
オウム返しをするオウムのほうがよっぽどマシだよ、そうイライラするばかりだ。
合間にしげよしで返金トラブルに遭った人たちのブログやらなんやらを、いろいろと読んでみた。
以前に日本テレビ系の「ミヤネ屋」でも返金トラブルが報じられていたことを知り、これはもうマトモな対応は期待できないと悟った。
ともかくメールで「キャンセル」を伝え、返金について再度問い合わせたが、やはり銀行振込か現金書留の一点張り。
なるほど、しげよし側は返金の意思と方法は示している。
それでも同じような状況に置かれた人たちの体験談はこんな感じ。
銀行口座を伝えても全然返金されず、消費生活センターに相談した
返金されないので何度催促のメールを出しても、一切返信がない
まぁこれ、どう考えてもヤバイ状況でしょ…。
とはいえ同様の被害者が多い(?)からか、「どうやって返金してもらえたか」というノウハウの情報もいろいろあった。
本社宛てに内容証明郵便を出したら、銀行振込で返金された
警察に相談に行き、相談状況を詳細に書いたメールを送ったら、楽天ペイ経由で返金された
私と同じようにクレジットカード決済をした人は、
カード会社に『支払い停止の抗弁』の申請をしたら、申請が認められてカード会社から返金された
という情報を出していた。
注文をキャンセルして1週間。
しげよしにメールを出しても返信がこなくなっていたため、楽天カードに連絡して「かくかくしかじか」と事情を伝え、支払い停止の抗弁の手続きをすることにした。
楽天カードからは注文したサイトや注文品の写真、電話をした日時や回数、領収書、先方の会社とのメールのやりとりなどの一切をプリントアウトして提出するよう求められ、これまた大変な作業に追われた。
こちらに非はないはずだが、それでも申請が認められない場合もあるとのこと。
その場合には、泣き寝入りするしかない。
それでも注文キャンセルから3ヵ月近く経った先日、無事に楽天カードから「35,160円」の返金通知があった。
ちなみに法事の会食の仕出しは、恐る恐る近所の日本料理屋さんを訪ねて頼んでみたらあっさりOK。
当日はおいしい仕出し弁当を時間通りに配達してくださって、やっぱりリアルの、顔が見える買い物(取引)は確かだと痛感した。
今回の経験を通じて、あらためてネットショッピングやネット通販について調べてみた。
そこで意外にも、ネットショッピングには「クーリング・オフ制度」が適用されないことを知った。
クーリング・オフとは、
いったん契約の申し込みや契約の締結をした場合でも、契約を再考できるようにし、一定の期間であれば無条件で契約の申し込みを撤回したり、契約を解除したりできる制度
(消費生活センター公式サイトより引用)
のこと。
無条件で契約を解除できる期間は取引内容によって異なり、8日または20日以内だ。
一方、前述のとおり、ネットショッピングやネット通販、テレビ通販などにはクーリング・オフが適用されない。
国民生活センターの公式サイトには、ネットショッピングに関する消費者からの相談と、それに対する回答として次のような記載がある。
内容
〈インターネット通販で靴を購入した。大きめのサイズを注文したが履いてみると窮屈だった。返品したいとメールしたところ「返品できない。利用規約にも書いてある」との返事だった。確かに利用規約には返品不可の記載があったので「それならクーリング・オフしたい」と伝えたが「通信販売にはクーリング・オフの適用はない」と回答が来た。(60歳代)
ひとこと助言(一部抜粋引用)
〈インターネット通販やテレビショッピングなどの通信販売には、法律上のクーリング・オフ制度はありません。返品の可否や条件についての特約があればそれに従うことになります〉
つまりネットショッピング等にはクーリング・オフ制度は適用されないが、その代わりに事業者ごとの「返品ポリシー」や「キャンセルポリシー」に従って返品やキャンセル手続きを行える可能性があるということ。
Amazonや楽天市場など代表的なネットショッピングサイトには、それぞれ「キャンセルポリシー」がある。
たとえば「届いた商品が壊れていた」とか、「注文したサイズと違う」とか、当の事業者が設けた規約に適合する場合には、返品や交換、キャンセル、返金などが認められる。
反面、「キャンセルポリシー」に適合していなければ、返金されない可能性も生じる。
私は以前、Amazonで水着を購入した。
商品タグを外さず、下着の上から試着したらサイズが小さすぎる。
Amazonなのでてっきり返品または交換できると思ったが、キャンセルの申し込み画面では「購入品はAmazonが販売した商品ではないため、返品できません」と表示された。
どうやらマーケットプレイス経由の商品だったようで、出品者に直接連絡をしないと返品できないらしい。
確認すると出品者は中国系企業だったため、自己負担になる返送料や手間などを考えて結局返品を断念した。
Amazonでさえ、こういうことがある。
とりわけリスクが大きいのは、SNSや動画などの広告をクリックして業者のサイトから購入したり、契約したりした場合。
〈コレひとつでシミが消えた?! 悩んでるヒマがあったら今すぐ使って!〉
〈芸能人の〇〇さん愛用。絶対やめられなくなるスゴわざ美白液!〉
〈ダイエットやめました。食べても太らない決定的新商品が今だけ90%オフ!!〉
日頃、目にしがちなこうした広告をついポチッとして「商品購入」をするとき、キャンセルポリシーまで丹念にチェックする人はそう多くないだろう。
結果、届いた商品が粗悪品だったとか、毎月の定期購入契約になっていたとか、そういうトラブルに見舞われても、キャンセルポリシーに適合しなければその後の返金は非常にむずかしい。
便利で、自分の好きなように利用できるネットショッピングの恩恵は言うまでもない。
けれども同時に、思いがけないトラブルに見舞われたときどう対処するか。
そもそもトラブルに遭わないためにどんな注意をすればいいのか。
そんな意識がとても大切だと思う。