生放送
6月からテレビ西日本(TNC)の「土曜ニュースファイルCUBE」にコメンテーター出演している。
毎週土曜日の午前中、福岡県内を中心に生放送されている報道番組だ。
放送時間は、10時25分~11時45分の80分間。
主に福岡県内で起きた事件や自然災害などのニュース、社会的な問題を取り扱う特集、それにスポーツや時事ネタ、地元のおススメ情報などが盛り込まれている。
私もテレビ出演の機会は多いが、これまではたいていスポット出演。
何かの事件が起きたり、専門的なコメントが必要になったときに「単発で出演する」という意味だ。
この場合、出演時間はせいぜい20分程度で、コーナーが終われば退席となる。
ところが「CUBE」は、最初から最後までずっと出演する。
コメンテーターとしての役割も、自分の専門に限らず、政治経済とか、観光情報とか、いろいろな分野のコメントをしなくてはならない。
自分が一視聴者としてテレビを見ているときは、出演者の言葉に「もっとマトモなこと言えばいいのに」とか、「はぁ? 意味わかんないし」とか、冷たいツッコミを入れたりする(汗)。
なのに、自分がその立場になると、これがとってもむずかしいのだ。
たとえばVTRが終わってカメラがスタジオに戻り、MC(メインキャスター)が「〇〇さん、どう思いますか?」などと話を振ってくる。
ここまではわりと台本に沿った(報道番組にも進行台本はある)流れなのだが、当の〇〇さんのコメントがどれくらいの時間で終わるか、そのときにならないとわからない。
「スタジオの時間は3分」などと、実はとても短い。
その短い時間をMCやコメンテーターで分け合って使うわけだが、誰が、どれくらいの時間を使うかによって、自分の持ち時間が変わってくる。
先にコメントをされた方の話の内容が、自分が言おうとしていたこととかぶっている、なんてこともある。
そうなったら、瞬時に頭を切り替えて、別のコメントを出さなくてはならない。
また、悲しいニュースやむごい事件が報じられたあとで、明るい話題やスポーツ、お天気中継なども盛り込まれる。
頭だけでなく、心も切り替えないと番組の進行についていけない。
私以外のコメンテーターさんたちは出演歴が長く、テキパキとお話をされる。
堂々としていて、的確に、そして簡潔に言葉をまとめている。
一方、私はいつもハラハラドキドキ。
緊張で脇アセ止まらないぃ~、と焦るばかりだ。
ところが、そんな私のコメントにスタジオの皆さんがなぜか笑う。
もちろん、バカにして笑うのではなく、「おもしろい!」と笑ってくれるのだ。
初回の出演時、「初心者向けの登山、地元のおススメ山登り情報」という、息抜き的なコーナーがあった。
MCが、「石川さん、山登りはどうですか?」と聞くので、「私、登山とか山登りってやったことないんです」と答えた。
本当にやったことがないから、正直に答えるしかない。
デキるコメンテーターなら、「山登り、ステキですねぇ。ぜひ行きたいです」とか、「新緑がきれいで、健康にもいいですね」とか、そういう発言ができるだろうが、私はその点、まったく場慣れしていない。
「山登りはどうですか?」と聞かれて、「やったことがない」なんて返してたら、おい、空気読めよ、って思いっきり引くような展開だ。
あとから冷静に考えたら、何をバカ正直に答えてるんだ、となるのだが、そのとき私はこう言った。
「私、登山とか山登りってやったことがないんです。人生が山あり谷ありだから、そっちの山登りに忙しくて…」
次の瞬間、スタジオのみなさんが爆笑した。
当の私は、あれ? 変なこと言っちゃった? とまた焦る。
生放送が終わったあと、MCやほかのコメンテーターさんが、「石川さんの人生の山と谷が知りたい~」、「ウケたー」などと笑顔で話かけてくれて、ようやく爆笑の理由がわかった。
毎回こんな調子で、私は自分の発言をあとから振り返っては、ああ、なんであんなこと言っちゃったんだろう、と落ち込む。
でも、そんな心を見透かすように、先日、15日の出演後は、女性MCの角田さんが「石川さんの自虐コメント、大好き~」とフォローしてくださった。
的確に、簡潔に話すというのは、本当にむずかしい。
自分が一視聴者としてテレビを見るときのツッコミは、もうやめなくては、と思う。