活動報告

活動報告

2017.06.22
「子どもの保護」の裏側

日々忙しく、全国を飛び回っている。

今月はテレビのコメンテーター出演のために、福岡へ2回往復。

講演会では埼玉、岐阜、京都、千葉とまわり、取材でも神奈川や静岡、そして某県へ行った。

最後の「某県」の名前を出せないのには理由がある。

「取材源の秘匿」、つまり誰さんからこういう話を聞いた、というネタ元を明かすことによって、取材に協力いただいた方に迷惑が及ぶのを避けるためだ。

話を伺ったのは、児童福祉や子育て支援に携わる保健師さん数名。

「ゴミ部屋に暮らす子どもの保護」について、率直な思いを聞かせていただいた。

実は同様の話をあちこちで聞いていて、正直、「ああここでも...」と暗澹たる気持ちになった。

いったいどういう話なのか、かいつまんで説明しよう。

部屋中にゴミが散乱し、食事や入浴もままならない子どもがいる。

いわゆるネグレクト(育児放棄)家庭で育つ子だ。

ネグレクトは児童虐待のひとつで、子どもの心身への悪影響が懸念されるだけでなく、場合によっては「衰弱死」などの悲惨な結末に至ることもある。

一刻も早く子どもを保護したいのはやまやまで、保健師さんたちは毎週のように家庭訪問したり、児童相談所と連絡を取り合ったりしている。

そうした活動と同時に、「とにかく少しでも部屋をきれいにしたい、子どもにちゃんとした食事を与えたい」、そんな気持ちは当然ながら強い。

ゴキブリが這いまわり、汚臭が漂う部屋に所在なく座り込む子どもの姿を見れば、誰だって「早くなんとかしたい!」と思うはずだ。

「でも、私たちが部屋の掃除をしたり、ご飯を作ってあげたりすると、かえって子どもが保護されなくなるんです」

保健師さんたちは、なんともつらそうな表情を浮かべながら嘆息した。

掃除や食事の世話をすることで「子どもが保護されなくなる」とは、一般の人にはなかなか理解できない話だろう。

保健師さんが掃除や食事の世話をしなくてはならないほどの状況なら、むしろ一刻も早く子どもを保護すべきだ、と考えるのが「世間の常識」だと思う。

ところが、行政の解釈は違う。

仮に保健師さんたちが掃除や食事の世話をしたら、「子どもの生活状況が改善された」、「したがって保護の必要なし」と判断される可能性がある。

あくまでも「可能性」なので全部が全部そうだとは言えないが、少なくともこの保健師さんたちはやりきれない顔で言う。

「子どもの生活状況が悲惨であればあるほど保護される。そのためには悲惨な状況をそのままにしておかなくてはならないって、どう考えてもおかしな話ですよ。いったい誰のための児童福祉なのか、理不尽すぎてやってられない」と。

同様の話をあちこちで聞いていると前述したが、残念ながらそうなのだ。

首都圏のある保育園でも、「母親に虐待されている園児の保護を、児童相談所に何度お願いしても対応してもらえない」と嘆いていた。

児童相談所の見解は、「子どもが登園しているなら、保育園で見守りができる。登園できないほどの状況になったら保護を検討しましょう」なのだそう...。

園長先生は私の取材に対し、「子どもが死にかけないと保護してもらえないのか? 冗談じゃない!」と怒りまくっていたが、まったくそのとおりだ。

現場の人たちが、「子どもを救いたい、守りたい」と一生懸命でも、実際に子どもが保護されるまでには「どれくらい悲惨なのか」が検討され、結論付けられる。

救急医療のトリアージに似ているのかもしれないが、「命の危機に瀕した重症患者」ならすぐに治療してもらえて、「まだそこまでの段階じゃない」とされたら様子見、そんな感じだ。

でも、そこにいる子どもはやっぱり悲惨なのだ。

今日はなんとか乗り越えられても、1週間後、1ヵ月後にどうなるかはわからない。

現に「様子見」された挙句、最悪の事態に陥る子どもが後を絶たないではないか。

こういう現実を知るたび、現場の人と同じく私もやりきれなくなる。

怒り、悲しみ、失望...、いろんな気持ちに駆られるが、だからこそこの理不尽な状況を伝えていくのが私の仕事だ。

京都での講演会は、民生児童委員さんが聴講してくださった。

地域の相談役、見守り役として日々奮闘されている方々だけに、いろいろ思い当たることもあるのだろう。

深く頷きながら、真剣に耳を傾けてくださる姿が印象的だった。

もちろん、「現場でこんなことが起きている」と伝えるだけでなく、「この状況を変えるために何ができるか」を、できるだけ具体的にお話している。

制度や法律が変わることは重要だが、それだけでいいはずもない。

変わるまでは時間がかかるし、制度や法律が及ばないところで救いを待つ子どもは、今、この瞬間にも日本各地にいる。

私たちに何ができるのか、どうしたらいいのか、及ばずながらも精一杯の思いを込めて伝えつづけたいと思う。

石川結貴

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