『369のメトシエラ』上映イベント&シンボジウム

八王子市の南大沢文化会館で行われた『369のメトシエラ』の上映イベント&シンポジウムに、パネリストとして参加してきました。

「メトシエラ」って、聞きなれない言葉ですよね。

私も、主催の映画製作会社から出演依頼をいただいたとき、真っ先に「メトシエラって何ですか?」とお尋ねしたくらいです(笑)。

メトシエラとは、旧約聖書に登場する最も長寿な人のことだそうです。

映画の中では、主人公の男性・俊介を「400年も待っていた」という老女が出てくるのですが、要するに彼女=メトシエラ。

そして、369というのは、映画の中に出てくるアパートの部屋番号なのです。

…こんな説明では、さっぱり映画の内容がわからないと思うので、興味を持たれた方はぜひYou Tubeで、予告編をご覧ください。
http://www.youtube.com/watch?v=BqBxjShAbOM

監督の小林兄弟(兄・克人さん、弟・健二さん)は、映画に込めた思いを次のように語っています(「368のメトシエラ」公式ホームページより一部抜粋)
http://www.junglewalk.co.jp/369/top.html

住民票など一切の公的記録の存在しない独居高齢者、名前さえわからない育児放棄された無国籍児、家出をしたゲイの若者…。
そうした人々に共通するものを探るうち、「都会の中の孤独」が浮かび上がってきた。人との関係を断ち切り、孤独であることは同時に「自由」であるということだ。主人公はそう信じて生きている。だが、人と人がつながり合い、支え合う事を忘れたくないし、信じ合えることを願っている自分たちに気がついた。
孤独とは何か、人は孤独で生きて行けるものなのか。過去も問わず、その人の今の言葉だけで信じる事はできるのか。その問いの答えは、隣人に対し無関係を装ってしまう自分たちの中にあった。
現実の世界では日々、「所在不明高齢者」「児童虐待死」など痛ましい事件が報じられている。だからこそ私たちは映画として、「希望」を求めた。本作品を都会を舞台にした大人の寓話としてご覧いただければ幸いである。

私は、著書『ルポ 子どもの無縁社会』(中公新書ラクレ)の中で、親に名づけられることもなく路上やスーパーのトイレ、公園のベンチなどに「捨てられた子どもたち」について書きました。

公的には、彼らは「棄児」や「置き去り児童」と呼ばれます。
 
景気が悪いとはいえ、豊かで平和な日本で、 年間どれくらいの子どもたちが捨てられているか、みなさんはご存じでしょうか。

たとえば、2009年度に全国の児童相談所が対応した「棄児」は25人。

そして「置き去り児童」は212人です。

合計すれば、わずか1年間で237人もの子どもが、捨てられたり、放置されたりしています。

毎年、ほぼ同じような状況で、何の罪もない子どもたちが過酷な現実を背負わされているのです。

シンポジウムでは、そんな視点を持ってこの映画を見てほしい、といったお話をしました。

なお、映画に主演された大垣知哉さんは、俳優だけでなく、シンガーソングライターとしても活躍中とのこと。伸びのある高音でさわやかに歌い上げる様子は、映画とはまた違った魅力にあふれています。

シンポジウム終了後は、大垣さんや監督さんなどスタッフのみなさんと記念撮影。

こんなふうに得たつながりが、少しずつでも子どもたちの過酷な現実を変えていく力になればいいな、と思っています。